中国からの購買・調達業務では、「できるだけ安く購入すること」が重要だと考えられがちです。
しかし、実際の購買業務では、価格だけを見て判断すると、納期遅延や品質不良、緊急輸送、在庫不足などによって、結果的にコストが増えてしまうことがあります。
また、担当者個人の経験や勘に頼った購買管理では、担当者が変わったときに情報が引き継がれず、会社としての購買ノウハウが蓄積されません。
本当に重要なのは、「いくらで買ったか」だけではなく、「なぜその仕入先を選んだのか」「実際にどのような結果になったのか」をデータとして管理することです。
01|最低価格だけを比較し、総合的なコストを見ない
A社の見積が100円、B社が95円。
「5円安いからB社にしよう。」
そう判断したものの、B社は納期遅延が多く、品質も安定しない。
その結果、生産ラインが止まり、緊急輸送費が数千円発生。さらに手直しや再加工にも費用がかかる。
価格が安い=コストが安い、とは限りません。
成熟した購買担当者は、価格だけではなく、
価格納期 遵守率 品質・合格率 トラブル発生率 緊急対応費 再加工などの異常コスト
などを含めて総合的に判断します。
一度の選定ミスで発生するコストを考えれば、5円の差など簡単に消えてしまいます。
02|「きっと大丈夫」で仕入先を判断する
「長年付き合っている会社だから、きっと問題ない。」
「社長さんも感じのいい人だから、きっと信頼できる。」
この「きっと」という言葉は、購買にとって危険な場合があります。
例えば、A社の納期遵守率が98%、B社が72%なら、重要な注文をどちらに出すべきかはデータから判断できます。
仕入先との関係性は大切です。
しかし、継続して取引するかどうかは、
納期遵守率
遅延日数
品質・合格率
クレーム件数
対応スピード
など、具体的な実績をもとに判断することが重要です。
03|会社への報告する時に
上司から、
「今年、この材料はどのくらい値上がりした?」
と聞かれて、
「戻って計算します。」
「一番購入金額が大きい仕入先はどこ?」
と聞かれて、
「ちょっと集計します。」
何年も購買を経験しているのに、基本的な数字をその場で把握できない。
これは単に「経験が少ない」ということではありません。
日々のデータが、自分自身の管理能力になっていないということです。
今月いくら購入したのか。
仕入先ごとの購入比率はどのくらいか。
どの商品・カテゴリーの価格が上昇しているのか。
こうした数字は、必要なときにすぐ確認できる状態にしておくことが大切です。
データをすぐに把握できる購買担当者と、毎回表を探しに行く購買担当者では、管理の仕方が大きく変わります。
04|在庫がなくなりそうになってから発注する
生産担当者から、
「この材料はいつ届きますか?」
と聞かれて在庫を確認すると、
「えっ、あと20個しかない?」
仕入先の最短納期は7日。
しかし、現在の在庫は3日分しかない。
そこから緊急で仕入先を探したり、納期短縮を依頼したり、急いで手配したりする。
一見すると、とても忙しく仕事をしているように見えます。
しかし、本当の問題はもっと前から始まっていたのかもしれません。
購買担当者が、
現在庫 安全在庫率 1日あたりの使用量 入荷予定 リードタイム
を把握していれば、在庫が安全ラインを下回る前に対応できます。
毎日「火消し」をするのではなく、火事が起こる前に気づくことが重要です。
05|仕入先が納期遅延しても、催促するだけ
1回目の遅延。
「早くお願いします。」
2回目。
「今回も納期を確認してください。」
3回目。
「また御社ですか?」
そして翌月も、何事もなかったように同じ仕入先へ発注する。
一生懸命に催促しているのに、
| 1か月に何回遅延しているのか | 平均何日遅れているのか | どの商品で遅延が多いのか | 特定の仕入先に偏っていないか |
を記録・分析していない。
同じ仕入先が3か月連続で遅延しているなら、何度催促しても根本的な問題は解決しません。
催促することは対応。
原因を分析し、改善につなげることが購買の仕事です。
06|見積が来たら比較するだけで、過去の価格を見ない
仕入先から100円という見積が届いた。
他社にも見積を依頼すると、
A社:100円
B社:98円
C社:95円
「95円が一番安いから、ここにしよう。」
でも、ちょっと待ってください。
去年、この商品はいくらで購入していたでしょうか?
もし昨年の価格が80円だったなら、現在の「最安値」だけを見ていても、本当に適正な価格なのかは判断できません。
見るべきなのは、
現在の見積価格
他社の見積価格
過去の購入価格
過去半年・1年間の平均価格
市場価格の推移
などです。
例えば、システム上で過去半年の平均価格が82円だったとします。
「今回の見積は平均価格より10%以上高くなっています。もう一度価格を見直していただけませんか?」
このようにデータを示せば、単に「高いです」と伝えるよりも、交渉の根拠になります。
07|注文を出したら、仕事は終わったと思う
注文書を発行した。
「これで仕事は完了。」
そう考えてしまう方がいます。
しかし、本当の購買管理は、発注してからが本番です。
仕入先は予定どおり生産しているか
いつ出荷されるのか
実際にどれだけ出荷されたのか
納期に変更はないか
遅延する可能性はないか
こうした情報を確認し、注文を最後まで実行するのは大切です。
毎回電話やメッセージで確認していると、当然、購買担当者は忙しくなります。
発注することが仕事なのではなく、発注したものを確実に納品までつなげることが購買の仕事です。
08|トラブルが起きても、振り返らない
品質問題が発生した。
→ 対応する。
納期が遅れた。
→ 催促する。
価格を間違えた。
→ 修正する。
そして、
「はい、終わり。」
これでは、翌月も同じ問題が起こる可能性があります。
なぜ毎日のようにトラブル対応に追われるのでしょうか?
それは、目の前の「今回の問題」だけを解決して、「なぜ同じ問題が繰り返されるのか」まで考えていないからです。
例えば、月末に20件の異常を振り返ったところ、そのうち15件が同じ仕入先から発生していた。
ここまでデータを整理すれば、重点的に改善すべき相手が見えてきます。
大切なのは、問題が起きないことだけではありません。
同じ問題を繰り返さない仕組みを作ることです。
09|価格だけを見て、支払いや支払条件を管理しない
購買担当者には、
「自分の仕事は、できるだけ安く買うこと。」
という考え方があります。
しかし、会社が気にしているのは価格だけではありません。
「そのお金は、いつ支払うのか?」
ということも重要です。
- 購入金額
- 支払条件
- 支払サイト
- 買掛金
- 請求書
- 入庫状況
これらも購買業務と関係しています。
価格交渉はうまくいったのに、支払いの管理がうまくいっていない。
購買担当者は「発注した」と言い、倉庫は「入庫した」と言い、経理は「請求書が届いていない」と言う。
3人が集まって確認しても、情報が一致しない。
注文・入庫・請求書・支払いがきちんとつながっていれば、重複した確認や無駄なやり取りを減らすことができます。
購買は「物を買う仕事」だけではなく、「会社のお金がどのように動くのか」を理解する仕事でもあります。
10|すべてを自分の頭の中だけで管理する
そして、最後が一番重要です。
何年も購買を経験していると、
「この会社は信頼できる。」
「この会社には強く催促したほうがいい。」
「去年はこの価格だった。」
「この仕入先は以前、納期遅延があった。」
など、たくさんの経験が蓄積されます。
一見すると、とても経験豊富な購買担当者です。
しかし、その人が退職したらどうなるでしょうか?
人間関係も、価格の履歴も、仕入先に関する知識も、その人と一緒に会社からなくなってしまうかもしれません。
本当に成熟した購買とは、一人の人がすべてを覚えている状態ではありません。
仕入先情報、見積価格、発注履歴、納期、品質トラブル、対応履歴、支払い情報などを会社のデータとして蓄積する。
そうすれば、人が入れ替わっても、会社に購買の経験が残ります。
「経験」ではなく「仕組み」にする
この10項目をまとめると、購買の仕事には大きく3つの段階があります。
① 表面的な数字だけを見る
価格だけを見る。
在庫がなくなってから発注する。
遅延したら催促する。
② データから原因を考える
過去の価格と比較する。
仕入先ごとの納期実績を見る。
トラブルの発生傾向を分析する。
③ 経験を会社の仕組みに変える
仕入先、価格、注文、納期、品質、トラブル、支払いなどの情報を蓄積し、誰でも活用できる状態にする。
購買担当者の価値は、単に「安く買えること」だけではありません。
数字を見て、原因を考え、次の判断につなげる。
そして最終的には、個人の経験を会社の財産に変えていく。
これが、購買業務を「作業」から「管理」へ変えていくために重要な考え方です。

