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中国サプライヤーとの会話術|仕入れ交渉で「言葉をつつしむ」ための5つのポイント

2026 2/25
コラム ビジネス中国語 事例、失敗例から学ぶ 仕入知識
2026年2月25日2026年9月25日

中国には、「真话不全说,假话全不说」という言葉があります。
直訳すると、「本当のことをすべて話す必要はない。ただし、嘘は一切つかない」という意味です。

ビジネスにおいて、話すことは単なるコミュニケーションではありません。何を話すのか、何を話さないのか、どこまで伝えるのか、いつ伝えるのか。 こうした判断も、仕入れ交渉の重要なスキルです。

特に中国メーカーや中国サプライヤーとの取引では、日本の感覚だけで「聞かれたことには正直に答える」という対応をすると、知らないうちに自分たちの交渉材料を相手に渡してしまうことがあります。

もちろん、ここで紹介する内容がすべての中国人や中国企業に当てはまるわけではありません。中国での仕入れやメーカーとの交渉を経験してきた中で感じる、比較的よく見られるコミュニケーションの特徴として参考にしてください。

中国語で「打太极(dǎ tài jí)」という表現があります。もともとは太極拳の「力を正面からぶつけず、相手の力を受け流す」イメージから来ています。会話では、相手の質問に対して必要以上に答えず、柔らかく話題をかわしたり、こちらから質問を返したりするコミュニケーションを指します。

これは「嘘をつく」という意味ではありません。むしろ、相手との関係を壊さず、自分の情報や交渉上の立場を守るための会話術と考えると分かりやすいでしょう。

中国仕入れでは、価格、予算、発注数量、競合サプライヤー、社内の意思決定者、納期の緊急度など、相手にとって価値のある情報がたくさんあります。これらを必要以上に伝えないことも、購買担当者の重要な仕事です。


PART 01

目次

購買担当者が損をするきっかけは、何気ない「一言」だったりする

購買担当者は、基本的にまじめで正直な人が多いと思います。サプライヤーと長く付き合うためには、信頼関係が必要ですから、これは大きな強みです。

ただし、「正直であること」と「すべてを話すこと」は同じではありません。

中国仕入れを長く経験していると、購買担当者にとって本当に価値のあるものは、単純な値下げ交渉のテクニックだけではないと感じます。

それは、情報です。

市場価格がどのくらいなのか、何社が見積に参加しているのか、社内予算にはどの程度余裕があるのか、今回の案件は本当に急いでいるのか。それを知っているのは購買側です。

しかし、一度口に出してしまった情報は、自分だけのものではなくなります。場合によっては、相手の交渉材料になってしまいます。

以前、電子部品を扱っていた購買担当者から、こんな話を聞きました。

あるサプライヤーの営業担当者と電話で話していたとき、何気なく、

「今回の価格は、他社と比べると少し高いですね。」
「你们这次的价格,在几家供应商里面算偏高。」

と伝えたそうです。

本人としては、サプライヤーに「もう少し頑張れば受注できますよ」と伝えるつもりでした。

ところが、その後の価格交渉では、毎回その言葉を使われるようになりました。

「御社も、うちの価格が高いと言っていましたよね。2%下げることはできます。ただ、その代わり納期について少し調整してもらえませんか。」
「你们采购自己也说了,我们的价格偏高。那我们可以降两个点,不过交期你们也要给我们一点空间。」

結果的に、購買担当者が善意で伝えた情報が、相手の交渉材料になってしまったのです。

さらによくあるのが、「今年は予算が厳しい」という発言です。

「今年は予算がかなり削られていて……。」
「我们今年的预算砍得比较厉害。」

この一言だけでも、サプライヤーは「この会社は予算に余裕がない」と判断できます。

だからといって、サプライヤーに何も話すな、ということではありません。

大切なのは、「この情報を相手に伝えることで、次の交渉にどんな影響が出るのか」を一度考えてから話すことです。


PART 02

サプライヤーとの「雑談」にも、実は情報収集が含まれている

中国メーカーの営業担当者は、会話が上手な人も少なくありません。

いきなり、

「御社の目標価格はいくらですか?」

とは聞きません。

それではあまりにも直接的だからです。

まずは天気や業界の話をしたり、最近の市場状況について話したり、場合によっては家族の話をしたりします。

そして会話が自然になったところで、こんな質問が入ってくることがあります。

「この材料、御社では1か月にどのくらい使いますか?」
「你们这个材料一个月大概用多少量?」

「今回は何社くらいで比較していますか?」
「这次你们大概有几家在比价?」

「新しく来た責任者の方は、どんな感じですか?」
「你们新来的采购负责人,做事风格怎么样?」

「次のプロジェクトは、いつ頃スタートする予定ですか?」
「你们下一个项目大概什么时候启动?」

一つひとつは、普通の雑談に聞こえます。

しかし、これらの答えをつなぎ合わせると、サプライヤー側にはかなり具体的な情報が見えてきます。

発注量が多いのか少ないのか。何社で競合しているのか。社内の決裁者は誰なのか。次の案件はいつ始まるのか。

つまり、会話の中の一つひとつの質問が、見積や交渉の判断材料になっていることがあります。

私自身も、以前似たような経験がありました。

ある金物メーカーの営業担当者と食事をしていたとき、相手から何気なく、

「最近、御社は上司が変わりましたか?以前と承認書のサインが違いますよね。」
「你们公司是不是最近换领导了?我看你们审批单上的签字好像变了。」

と聞かれました。

「よく見ていますね」と思い、社内の状況について少し説明しました。

その翌日に届いた見積を見ると、前回より約3%高くなっていました。

後になって考えると、相手が確認していたのは単なる人事情報ではありません。

「社内の意思決定の仕組みが変わったのではないか」

ということだったのでしょう。

もちろん、これは「相手が悪い」という話ではありません。

サプライヤーも、自分たちの仕事をしているだけです。

だからこそ、購買側も自分の仕事として、どこまで情報を共有するのかを判断する必要があります。


PART 03

「正直に答える」より「すぐに答えない」ほうがいい場面もある

たとえば、サプライヤーから、

「この価格なら受け入れられますか?」
「这个价格你们能接受吗?」

と聞かれたとします。

つい、

「ちょっと高いですね。あと3%下げてもらえれば決めます。」

と答えてしまう。

これでは、自分の心理的な上限をほぼその場で教えていることになります。

私なら、

「一度社内で確認して、明日までに回答します。」
「我先内部核算一下,明天给你一个明确答复。」

と返します。

この違いは小さく見えますが、交渉では大きな違いになります。

すぐに答えると、その数字を基準に、その後の交渉が進んでしまいます。

一方で、一度持ち帰れば、自分で市場価格や他社見積を確認してから判断できます。

次に、

「今回、うちに決まる可能性はありますか?」
「我们这次是不是有希望?」

と聞かれた場合。

「かなり可能性あります。もう少し頑張ってください。」

と答えるのではなく、

「現在、数社の提案を比較しています。御社の提案も、条件を整理して出してください。」
「现在还有几家在评估,你先把你们的方案和条件做扎实。」

くらいに留める。

ここで重要なのは、約束はしないけれど、方向性は伝えることです。

「決まります」と言う必要はありません。

しかし、「きちんと提案してください」という方向性は伝えられます。


PART 04

「発注数量」と「最低価格」は、簡単に教えない

サプライヤーから、

「来月はどのくらい発注する予定ですか?」
「你们下个月还有多少量?」

と聞かれたとします。

「だいたい2,000個です。」

とすぐに答えるのではなく、

「数量はプロジェクトの進み具合によります。まず御社の生産能力と現在のスケジュールを教えてください。」
「量会跟着项目走,你先把你们那边的产能和排期情况告诉我。」

と返すこともできます。

これは情報を隠しているのではありません。

こちらが情報を出す前に、相手の情報も確認するということです。

特に重要なのが「最低価格」です。

「御社として、最低いくらなら発注できますか?」
「最低什么价格你能签?」

と聞かれて、

「○○円です。」

と答えてしまうのは避けたいところです。

私なら、

「まず御社のベストプライスを提示してください。こちらでも複数社を比較しています。」
「你先报你们的最优价格,我们这边还在同时评估几家供应商。」

と返します。

自分の「底値」を先に教えてしまえば、相手はその金額を基準に価格を組み立てることができます。

中国仕入れでは、「いくらまでなら買えるか」より、「相手はいくらで出してくるのか」を先に確認することが重要な場面があります。


PART 05

「他社にも見積を取っていますか?」にも、すべて答える必要はない

サプライヤーから、

「今回は他社にも見積を依頼していますか?」
「你们是不是也找了别家?」

と聞かれることがあります。

「はい。正直に言うと、御社は少し高いです。」

と答えれば、相手に「では、どこまで下げればいいのか」という情報を与えることになります。

かといって、嘘をつく必要もありません。

たとえば、

「この業界では通常の購買プロセスに沿って比較しています。」
「这个品类我们都是按照正常的采购流程进行评估的。」

という言い方があります。

「何社です」と具体的な数字を伝えなくても、嘘にはなりません。

ここで大切なのは、曖昧にすることと、嘘をつくことは違うということです。


PART 06

条件を聞かれたら、「交換条件」に変える

もう一つ、よくある質問があります。

「支払サイトをもう少し長くできませんか?」
「你们的账期能不能再放长一点?」

これに対して、

「経理に聞いてみます。」

だけで終わらせる必要はありません。

たとえば、

「支払条件は会社の統一ルールなので、私の判断では変更できません。ただ、もし価格面でもう少し協力していただけるのであれば、その条件を持って社内で相談することはできます。」

「账期是公司统一政策,我这边没有权限调整。不过,如果你们能在价格上再给一点空间,我可以拿这个条件回公司帮你争取。」

という伝え方があります。

これは非常に実務的です。

自分に決定権がないことは明確にしながら、相手に「では、こちらも条件を出そう」と考えてもらえる余地を残しています。

つまり、一方的に条件を譲るのではなく、条件と条件を交換するのです。


PART 07

「打太极」には、守るべき3つの線がある

ここまで読むと、

「それは単に、うまく逃げる方法なのでは?」

と思うかもしれません。

私自身も、最初にこうした会話の仕方を覚えたときは、「少し計算高くなりすぎるのでは」と感じました。

しかし、「打太极」は嘘をつくことではありません。

言いたくないことには、

「今はまだ分かりません。」「社内で確認します。」「もう少し検討してから回答します。」

と言っていい。

ただし、架空の数字を出したり、守れない約束をしたりするのは別です。

一つ嘘をつくと、その嘘を守るために、さらに別の説明が必要になります。

中国仕入れの世界は意外と狭いものです。

一度「この会社は話すことが毎回変わる」と思われると、信用を取り戻すのは簡単ではありません。

また、「打太极」は、返事を先延ばしにすることでもありません。

「明日の午後3時までに回答します」と伝えたなら、その時間までに必ず連絡する。

たとえ答えが、

「現時点ではまだ決められません。」

だったとしても、それを伝える。

「拖」=ただ相手を待たせることと、「打太极」=情報をコントロールしながら進捗を伝えることは、まったく違います。

そして、品質問題や納期遅延など、責任が発生する場面では話が別です。

サプライヤーに問題があれば、必要な改善要求や損害についてきちんと話す。

「関係が近いから今回は何も言わない」

ではいけません。

「打太极」を使うのは、あくまで情報交換や交渉の場面です。責任まで曖昧にしてはいけません。


PART 08

実は「答える」より「質問する」ほうが強い

さらに一歩進めるなら、サプライヤーから質問されたときに、こちらから質問を返す方法があります。

サプライヤーが、

「目標価格はいくらですか?」

と聞いてきたら、

「御社のコスト構成では、どの部分が一番大きいですか?」
「你们现在的成本结构里,哪一部分占比最高?」

と聞いてみる。

「何個必要ですか?」

と聞かれたら、

「まず御社の現在の生産能力と納期を教えてください。」
「你先告诉我你们目前的产能和交期情况。」

「今回、決めてもらえますか?」

と聞かれたら、

「御社としては、いつまでにどの条件まで対応できますか?」
「那你们这边什么时候可以把方案和条件落实下来?」

というように、質問を返します。

以前、ある先輩から教えてもらった言葉があります。

「交渉の場では、質問する側のほうが有利になりやすい。」

質問に答える側は、自分の情報を一つずつ出していきます。

一方、質問する側は、相手から得た情報を使って次の判断をします。

中国サプライヤーとの交渉では、この違いを意識するだけでも会話の主導権が変わります。


PART 09

ただし、社内では「打太极」を使いすぎない

ここは非常に重要です。

サプライヤーに対して情報をコントロールすることは、購買の技術。

しかし、

社内に対して情報を曖昧にすることは、仕事を止める原因になります。

この二つは分けて考える必要があります。

サプライヤーとの交渉に慣れてくると、社内でも同じような話し方をしてしまう人がいます。

営業から、

「進捗どうですか?」

と聞かれて、

「今、調整しています。」

上司から、

「このサプライヤーはどうなっている?」

と聞かれて、

「まだ交渉中です。」

同僚から、

「この会社、本当に大丈夫?」

と聞かれて、

「まあ、状況を見ながらです。」

これでは、社内の誰も判断できません。

社内で必要なのは、情報のコントロールではなく、前に進めるための確実性です。

できるなら「できます」。

できないなら「できません」。

まだ決まっていないなら、「いつまでに回答できるのか」を伝える。

例えば、

「現時点では決められません。明日の15時までに、できる・できないを回答します。」

これだけでも、相手は安心して次の仕事を進められます。

「確定した答え」を出せなくても、「確定した回答期限」を出す。

これは購買担当者として非常に大切な考え方です。

また、社内の会話でも注意したいのが、価格やサプライヤー名などの情報です。

社内チャットに、

「○○社が1個500円で出してきた」

「代替候補は△△社」

などと何気なく書いた内容が、転送やスクリーンショットによって社外に出る可能性もあります。

これは同僚を疑うという話ではありません。

重要な情報は、必要な範囲で、正式なルートに残す。

購買情報を守るという意味でも、この習慣は大切です。


まとめ|中国仕入れで「話す力」と同じくらい大切なのが「話さない判断」

中国仕入れでは、価格交渉や品質管理、納期管理だけでなく、コミュニケーションそのものが交渉力になります。

中国サプライヤーから聞かれたことに、毎回すべて正直に答える必要はありません。

ただし、だからといって嘘をつく必要もありません。

「今はまだ分かりません。」

「社内で確認してから回答します。」

「まず御社の条件を教えてください。」

「明日の○時までに回答します。」

こうした一言を使い分けるだけでも、情報の主導権を守りながら、相手との関係を壊さずに交渉を進めることができます。

中国語には、**「真话不全说,假话全不说」**という考え方があります。

すべてを話さなくてもいい。

でも、嘘はつかない。

私は、この考え方は中国サプライヤーとの取引にも応用できると思っています。

以前、もし同じように「今年の予算はこのくらいですか?」と聞かれていたら、私は今ならこう答えます。

「その数字は、こちらもまだ社内確認中です。それより、御社は今年の生産能力をどのくらい確保していますか?」

「这个数字我们这边也还在确认。对了,你们今年的产能大概怎么安排?」

同じテーブルで、同じお茶を飲んでいても、先に情報を出す側と、先に情報を得る側では、交渉の位置が変わります。

中国仕入れの経験を積むほど、「何を言えるか」だけではなく、「何を、今は言わないほうがいいか」が分かるようになってきます。

成熟した購買担当者は、話すのが上手な人だけではありません。

必要なことは明確に伝え、必要のない情報は簡単には渡さない。

その判断力こそが、中国サプライヤーとの交渉で身につけておきたい、実務的なスキルの一つです。

中国メーカーとの取引でお悩みのことがございましたら、
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