中国購買担当者が陥りやすい10の落とし穴
先日、購買の仕事を9年間続けている知人と食事をしました。
お酒を2杯ほど飲んだところで、彼がこんなことを言いました。
「この9年間、成長していなかったわけじゃない。でも、成長するのが遅すぎた。同じ失敗を3回も繰り返したから。」
1回目は、「自分が分かっていなかった」と反省する。
2回目は、「環境が悪かった」と思う。
そして3回目になると、もう人のせいにはできない。
私は「どんな失敗だったの?」と聞きました。
すると、彼は10個の「落とし穴」を挙げてくれました。
話を聞いてみると、どれも特別なスキルの問題ではありません。経験年数だけで解決できるものでもありません。
その場では「たいしたことではない」と思っていたことが、後になって振り返ると、大きな時間やコストにつながっていた。
そんな「判断のズレ」に近いものばかりでした。
今回は、その10個を整理してみます。
今まさに購買の仕事をしている方にとって、何かの気づきになればと思います。

01 何を買うのか整理できていないのに、先に仕入先を探す
購買担当者が最初にやりがちなのが、まずアリババで見つけた仕入先に相談することです。
「こういうものが必要なんですが、何かありませんか?」
一見すると効率が良さそうですが、実はこの時点で主導権を相手に渡してしまうことがあります。
自社で必要な仕様が明確になっていなければ、中国サプライヤーは自分たちの理解に基づいて提案し、見積を出すしかありません。
そして、相手から出されたものを、そのまま受け入れることになってしまいます。
結果として、購入したものが実際には使えず、やり直しにかかる時間も費用も自社が負担することになります。
たとえば、現場から、
「この部品、もう少し丈夫なものにしてほしい」
と言われたとします。
一見すると、曖昧な要望です。
でも、実はここに購買担当者の仕事があります。
「丈夫」という言葉を、
| 引張強度はどの程度必要なのか | 材質は何が適しているのか | 試験は必要なのか | どこに取り付けるのか |
という具体的な条件に落としていく。
同じ「購買担当者」でも、現場から聞いた言葉をそのまま仕入先に伝える人もいれば、そこからさらに質問を重ねる人もいます。
必要な条件を一つずつ明確にしていくと、見積価格が下がることもありますし、その後のトラブルや問い合わせも減ります。
以前、板金加工の購買を担当している人から聞いた話があります。
ある筐体の図面を、仕入先との間で何度も修正していました。
最初の3回は、現場から受け取った要望をそのまま仕入先に伝えていました。そのため、仕入先は自社のやり方に合わせて見積を出し、実際に製作してみると組み付けられない。
そこで4回目は、購買担当者自身が組立関係を整理し、許容公差を明確にし、必要のない曲げ加工を一つ減らしました。
その結果、単価は8%下がり、組立時間も短縮されました。
最終的な図面は現場側が作り直したそうです。
購買担当者がしたことは、「何を確認すべきかを正しく質問した」ことでした。
02 見積書を「価格表」として見る
見積書で一番目につくのは、当然「価格」です。
しかし、本当に注意したいのは、その価格の下に書かれている条件です。
| 税込みか税抜きか 送料はどちらが負担するのか 最小発注数量はいくつか 見積価格の有効期限はいつまでか 金型費はどう計算されるのか 最小梱包単位はあるのか |
こうした条件を最初に確認しておかないと、実際に発注するとき、初回納品のとき、追加発注するときに、次々と問題が出てきます。
以前、ある見積書では、単価が競合他社より10%ほど安くなっていました。
ところが、契約後に詳しく確認すると、
| 最小発注数量は競合の3倍 送料は別途 見積有効期限は15日間 |
という条件でした。
さらに、追加発注のたびに価格交渉が必要。
年間で計算してみると、結果的には最初に「高い」と思った仕入先よりも多くのお金を支払っていました。
つまり、相見積もりは単価だけを比較するものではありません。
その条件を自社に当てはめたとき、1年間で実際にいくらかかるのかを見る必要があります。
簡単な方法があります。
すべての仕入先の条件を、1枚の比較表にまとめることです。
縦に仕入先、横に条件を並べる。
たった20分程度の作業でも、後々の「話が違う」「そんな条件は聞いていない」といったやり取りを大幅に減らせます。

03 営業担当者としか話さず、意思決定者と会わない
普段連絡を取っている営業担当者が、その会社で大きな決定権を持っているとは限りません。
納期について約束できても、生産計画を決めるのは別の部署かもしれません。
「先に出荷します」と言えても、経理の承認が必要かもしれません。
価格を下げたいと思っていても、最終的には上司の承認が必要かもしれません。
何年も取引しているのに、自分は入社当時から同じ営業担当者と話している。
その間に、相手側の購買責任者や工場責任者は何度も変わっている。
そうなると、自分がこれまでお願いしてきたことや、取引上の事情が、会社の意思決定者には十分伝わっていない可能性があります。
機会があれば、仕入先の工場を訪問してみる。
経営者や責任者と直接話してみる。
食事をしながら20分話すだけでもいい。
「自分は誰なのか」「自社は何を求めているのか」を相手に知ってもらうことには意味があります。
以前、線材を扱う購買担当者から聞いた話があります。
ある製品の納期がいつも安定せず、2年間も問題が解決しませんでした。
営業担当者に相談すると、毎回「社内で調整します」と言われる。
しかし、2年経っても改善されませんでした。
あるとき、仕入先のイベントで社長と話す機会があり、その問題について10分ほど話したそうです。
すると翌月、その製品の生産ラインが新しい工場へ移され、納期の問題が解消しました。
営業担当者が何もしていなかったとは限りません。
ただ、その人の立場では動かせない問題だったのかもしれません。
04 トラブルが起きたら、損失を抑える前に責任追及をする
納期が遅れた。
商品に問題があった。
そんなとき、まず「書面での回答を」「改善報告書を」「違約金を」と相手に求めたくなることがあります。
もちろん、責任を明確にすることは大切です。
ただし、順番が重要です。
商品が2日遅れているなら、まず考えるべきなのは、
「どうすれば一刻も早く商品を受け取って、生産ラインを止めずに済むか」
です。
責任追及は、その後でもできます。
場合によっては、相手との関係を考えて柔軟に対応することもできます。
以前、包装資材を担当していた購買担当者から聞いた話があります。
仕入先の印刷で色差が発生し、担当者は相手の営業責任者に何度も電話をして強く抗議しました。
さらに、弁護士からの通知を示して対応を求めました。
仕入先は商品を作り直しましたが、結果的に納品まで1週間かかりました。
その後は、まず商品を納品してもらい、翌日に補償について話し合うようにしたそうです。
同じ問題でも、順番を変えるだけで結果が変わることがあります。
責任追及が間違っているのではありません。
ただ、それを最初にする必要があるのか。
商品がまだ相手の手元にある段階では、こちらが持っている交渉材料も限られています。
まず損失を最小限に抑え、その後で冷静に責任や補償について話し合う。
この順番が重要です。
05 口頭の約束は残ると思い、記録を残さない
購買の仕事では、
| 规格稍作调整 「仕様を少し変更する」 将交期提前 「納期を前倒しする」 临时增加采购数量 「急きょ発注数量を増やす」 |
といったことが、メールやチャットの一言で決まることがあります。
しかし、一言で決まったことは、一言で「そんな話はしていない」と言われてしまうこともあります。
価格が変わったら、メールで確認する。
納期が変更されたら、社内システムも更新する。
サンプルを承認したら、できれば双方で確認した記録を残す。
どれも数分でできることです。
しかし、それが後になって重要になります。
自分が異動したとき。
相手の担当者が変わったとき。
半年後に条件を確認するとき。
そのときに自分を守ってくれるのは、記録です。
特に注意したいのが、契約締結後に少しずつ条件が変わっていくケースです。
半年後に、
| 合同上不是5,000元吗? 「契約では5,000元ですよね」 但是,实际上我们一直是按照6,000元来处理的。 「でも、実際には6,000元で対応しています」 |
という話になる。
途中で何度か口頭で変更していたものの、誰も記録していない。
こうなると、双方に言い分があります。
一番時間がかかり、関係も悪くなりやすいパターンです。
おすすめなのは、契約内容と違うことが発生したら、その日のうちに確認メールを送ること。
正式な文章である必要はありません。
| 关于今天的会议,我们确认○○将按照△△的方式推进。 「本日の打ち合わせでは、○○について△△で進めることで確認しました。」 |
これだけでも十分です。
記録を残す目的は、相手を縛ることではありません。
双方が同じ内容を理解している状態を作ることです。
06 社内の依頼部門を「対立相手」と考える
購買担当者と現場・依頼部門との関係が、いつの間にか「相手を警戒する関係」になってしまうことがあります。
依頼されれば、
「その仕様では不十分」
急かされれば、
「購買には手順がある」
と言いたくなる。
相手の依頼を止めることで、購買部門の存在意義を示そうとしてしまうこともあります。
でも、購買の仕事は社内の協力がなければ進みません。
仕様を決めるのは現場。
検収するのも現場。
実際に使って評価するのも現場です。
社内の関係が悪くなれば、仕入先との交渉がうまくいっていても、最後のところで仕事が止まります。
だからこそ、問題が起きたときには、
「この申請はルール上問題ないか?」
と考える前に、
「この人は、何を解決したくてこの商品を必要としているのか?」
と考えてみる。
すると、問題の半分は「そもそも何が必要なのか本人も整理できていない」ことに気づく場合があります。
設備メンテナンスの購買担当者から、こんな話を聞きました。
工場から、ある部品について「メーカー純正品指定」という依頼がありました。
価格はかなり高い。
そこで、単純に「高すぎる」と断るのではなく、実際に工場へ行って話を聞きました。
すると、本当に重要なのは純正品であることではなく、
「設備を止めないこと」
だと分かったそうです。
その部品は、その週のうちに必要だった。
そこで市場を調べ、在庫を持っている国内メーカーに切り替えました。
結果として価格は約半分になり、納期も3日短縮。
最初から「純正品指定だから無理」とルールだけを見ていたら、話は何カ月も進まなかったでしょう。
まず問題の本質を理解する。
それだけで、解決方法が変わることがあります。

07 会社の規模を、自分自身の交渉カードだと思う
大企業の購買担当者になると、
「うちはこれだけ発注量があるのだから、仕入先のほうが取引したがるはず」
と思ってしまうことがあります。
確かに、発注量は交渉材料になります。
ただし、それは会社の交渉力であって、自分個人の力ではありません。
会社の規模を前面に出して価格を下げさせることはできます。
でも、一度きりの価格交渉で相手を追い込むと、相手の中に「この担当者とは長く付き合いにくい」という印象が残ることもあります。
仕入先にも生産能力があります。
限られた生産ラインや人材を、どの顧客に優先して配分するのか。
それは相手側の判断です。
本当に信頼される購買担当者は、交渉の場で必要以上に「うちは大口だから」とは言いません。
自社の発注データを示し、今後の数量見込みを伝え、相手のコスト構造も理解したうえで価格について話します。
そのほうが、無理のない価格で長く取引できる可能性があります。
もう一つ、忘れてはいけないことがあります。
無理に引き下げた価格は、どこかで別の形になって返ってくる可能性があります。
安い材料に変更されるかもしれない。
熟練した作業員が別の案件に回されるかもしれない。
自社の生産順位が下がるかもしれない。
「価格交渉に勝った」と思っていても、実際には別の場所にコストが移っているだけかもしれません。
08 仕入先の「大丈夫です」を約束だと思う
| 没问题。 「大丈夫です」 请放心,交给我们吧。 「お任せください」 我们会尽量配合。 「できるだけ対応します」 |
こうした言葉は、気持ちのよい言葉です。
でも、それだけでは約束とは言えません。
本当に実行できるかどうかを見るなら、
| いつまでにできるのか 何個対応できるのか 何が問題になっているのか 問題が解決しなかった場合、どうするのか |
まで確認する必要があります。
すべてが曖昧なまま「大丈夫です」と言われても、実際には実現できないことがあります。
以前、ある購買担当者は、仕入先から「ご安心ください」と言われると、本当に安心してしまう人でした。
そのまま社内の計画表でもリスクを低く設定していました。
しかし、その結果、3回続けて材料不足が発生しました。
「大丈夫」という言葉は無料です。
でも、実際に納期を守ること、急な注文に対応すること、在庫を確保することにはコストがかかります。
むしろ、難しいことを事前に正直に伝えてくれる仕入先のほうが、信頼できる場合があります。
仕入先を見るときは、
「どれだけ早く『できます』と言ったか」ではなく、「前回約束したことを、最終的にどう実行したか」
を見る。
ここが大切です。
09 普段は連絡せず、年末や困ったときだけ仕入先を思い出す
購買担当者と仕入先の連絡が増えるのは、
「価格を下げてほしいとき」
「トラブルが起きたとき」
というケースがあります。
これでは、担当者から電話がかかってくるたびに、仕入先は「何か面倒なことが起きたのかな」と身構えてしまいます。
関係づくりは、特別な接待をするという意味ではありません。
普段から、相手に自社のことを知ってもらうことです。
先月は新しい生産ラインを見せてもらった。
今月は「来年はこういう方向に事業が変わりそうです」と伝えた。
新しい案件の図面を、正式発注前に早めに共有した。
こうした小さな積み重ねが、取引関係の中に蓄積されていきます。
急な注文が入ったとき、
「少し相談したいことがあるのですが……」
と電話を一本入れれば動いてもらえる関係と、
「今日中に何とかしてください」
と突然お願いする関係では、当然違いが出ます。
関係づくりに、必ずしもお金はかかりません。
自社が抱えている問題を早めに共有する。
業界の変化を伝える。
相手が準備できるように情報を渡す。
それも立派な「関係への投資」です。
10 築いてきた人脈を、自分だけの「強み」だと思う
購買の仕事を長く続けていると、さまざまな人脈ができます。
「この会社なら急ぎでも対応してくれる」
「あの社長なら価格を相談できる」
「この担当者に頼めば、少し無理を聞いてもらえる」
こうした人脈は、確かに購買担当者の大切な財産です。
ただし、一つ考えておきたいことがあります。
その関係は、
「あなた個人についてきているもの」なのか。
それとも「あなたの会社との取引関係」なのか。
それを考える方法は、とてもシンプルです。
「もし自分が別の会社に転職したら、同じことができるだろうか?」
できるなら、それは自分自身の経験や能力です。
できないなら、それは今の会社やポジションが与えてくれている環境かもしれません。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
ただ、会社の立場や役職によって得られた「便利さ」は、そのまま持っていくことはできません。
だからこそ、少しずつ、
個人的な人脈を会社としての正式な取引関係に変えていく。
そして、
自分だけができることを、誰でも使える仕組みやルールに変えていく。
そうすれば、いつかその仕事を離れることになっても、持っていけるのは「人の名前」だけではありません。
経験、判断力、交渉力、仕組み。
つまり、自分自身に身についた能力を残すことができます。
まとめ
先ほどの購買担当者は、最後にこう言っていました。
「この10個の落とし穴のうち、本当に理解できたのは5つもないと思う。残りは今でも、つい昔と同じやり方をしそうになる。でも、そこで一度立ち止まって、別の方法を考えるようになった。」
購買の仕事には、「これを覚えれば、もう成長しなくてもいい」という答えはありません。
できることは、前回よりほんの少しだけ、深く考えること。
一度失敗したことを、なかったことにする必要はありません。
むしろ、
「なぜ、あのときそう判断したのか」
「次に同じ状況になったら、どうするか」
を覚えておく。
そして、次は同じところに落ちない。
それだけでも、長い目で見れば大きな差になります。
購買の仕事で本当に積み上がっていくのは、経験年数だけではありません。
一つひとつの失敗から、次の判断を少しずつ変えられるようになること。
それが、経験を「ただの年数」で終わらせないために大切なことなのかもしれません。

