現場で感じる、日中ビジネス文化のリアルな「ズレ」
本記事では、私たちが実際のビジネス現場で見てきた「中国ビジネスの難しさ」を、実例を交えながらご紹介します。
特に、中国の製造工場における品質確保に苦労している日本企業の方々に向けて、中国企業や中国人とやり取りする際に知っておきたいトラブル回避のヒントをお伝えできればと思います。
中国人である私にとって、これは1980年代の記憶を思い起こさせます。
それは、中国の改革開放前後に実際に起きていた出来事でもあります。

1980年代の記憶
私自身も、1980年代末に中国で何度か驚くようなショッピングを経験しました。
国営百貨店で商品を少し長く見ているだけで、店員から、「買うのか、買わないのか。買わないなら、ここでウロウロするな」と言われたことがあります。また、購入後に少し質問を聞いただけで、「買いたくないなら、商品代は返すから、もう質問しないで」と突き放されたこともありました。
こうした出来事は、本来であれば市場経済が十分に整っていなかった、中国の改革開放以前の時代の話です。
2025年の取引現場にも残る1980年代の感覚
グローバル化の進展により環境が急速に変化する近年、多くの中国企業がサービス、品質管理などを重視するようになってきています。実際の取引の中、多くの取引先がグローバル基準での対応しています。
しかし2025年の今でも、中国の一部の工場では、品質面で何度も修正を求めると、
「日本の品質チェックは厳しすぎる」
「もう作れないので、注文をキャンセルします。お金は返します」
「これ以上の完成度を求めるなら、この注文はやめます」
といった返答が返ってくることがあります。
日本企業や中国以外の企業にとっては、
「なぜこのような考え方になるのか」と理解しにくい、
一部の中国企業特有のビジネス文化に映るかもしれません。
中国企業と取引のある日本企業が感じるチャイナリスクは、まさにこうした時に現れます。
日本では考えにくい出来事が、実際の取引現場では起こます。
日本側は「日本の品質チェックは厳しすぎる」と中国側から言われ、一方で日本側は「中国の対応は大雑把すぎる」と感じます。このような認識のズレが、日中ビジネスの現場では良く起こります。
国営百貨店が生んだ「売り手優位」の感覚
この感覚は、中国人である私にとって、1980年代の記憶と深く結びついています。
映画『瞧这一家子(この一家を見よ)』では、劉暁慶(リウ・シャオチン)が国営書店の店員を演じています。
一見すると普通の販売員ですが、その客に対する態度は非常に横柄で、まさに当時の「国家公務員が働く商店」を象徴する存在でした。
1980年代は物資が慢性的に不足し、信頼と独占が共存していた時代です。どの都市にも最も繁盛する国営百貨店があり、「鉄飯碗」を持つ国営百貨店の販売員は国家公務員として高い安定した待遇を得ていました。
そのため、慢心が生まれ、接客態度が悪く、お客様が目や耳で不快と感じる言動を取り、客とトラブルになることも日常茶飯事でした。
80年代、いとこの体験
私のいとこ(姉)は、80年代の体験を次のように語っています。
布地売り場で布の値段を丁寧に尋ねていると、販売員は次第に不機嫌になり、
「このおばさん、うるさいわね。ずっと聞くだけで布も買わないの?
どうせ買えないから、ウインドウショッピングに来ただけでしょ。
買わないなら、もう結構です」
と言われました。
それに対していとこが、
「どうして質問しているだけで、そんなに不機嫌になるんですか?」
と尋ねると、販売員はさらに強い口調で、
「布が買えるなら、さっさと買ってください!」
と返してきたそうです。
今ではあまり見かけない、聞くことも少なくなった話ですが、これは実際に80年代に起きていたことです。
商業環境は変わっても、昔の意識は残っている
時代の発展とともに、国営百貨店は次々と姿を消しました。
かつてのように横柄な態度をとっていた販売員の姿も、ほとんど見られなくなりました。
しかし現在でも、
細部まで完成度を求め、「完璧であること」に価値を置く日本企業の姿勢を理解できない中国企業
は少なからず存在しています。
その背景には、以下のような理由があると考えています。
中国企業の対応の背景
1.歴史的背景:売り手優位の記憶
物資不足の時代を長く経験してきた中国では、「作れる側・売れる側が強い」という環境が続いてきました。
国営企業時代には、作れば売れ、顧客は選べない状況でした。
この経験が、「注文は選ぶもの」「嫌な客とは取引しない」という価値観として、今も一部に残っています。
2.契約文化の違い:「約束」より「その場の判断」
日本では契約や合意は守るものと考えられますが、
中国の中小企業では、最終判断がその時の状況に左右されることが多くあります。
工場が忙しい、人手が足りない、他に楽な注文があるという考えをもっているようです。
特に日本企業から多くの品質修正を求められる場合、
「今はやりたくない」と判断され、突然注文が中止されることもあります。
3.面子(メンツ)の問題
修正指摘は、技術力不足や管理能力の否定と受け取られやすく、
面子を傷つけられたと感じると、ネガティブな対応につながります。
中国人である私自身も、中国企業と何度も打ち合わせを重ね、丁寧にお願いしているにもかかわらず、「もうお金を返すから、注文を終了します」と、中国メーカーに言われた経験が何度もあります。
そのたびに、80年代の国営企業の対応を思い出し、苦しい思いをしたこともありました。
思うように動いてくれない中国メーカーに頭を悩ませている日系企業はきっと少なくありません。
それでも、中国メーカー側の主張をしっかり受け止め、意見をぶつけ合うことができれば、こちらを理解してくれるようになるケースもあります。
その過程は簡単ではありませんが、こんな時に自分を励ます言葉として――
「強い気持ちで頑張ってください」
中国に限らず、海外企業と長く良好な関係を築くためには、その国の文化や歴史的背景、過去の商習慣を理解しておくことが、ビジネスにおいて大いに役立ちます。では……

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