日本専属の通訳、コンサルタントを確保していますか?交渉相手側の通訳を依頼していませんか?
「中国語は話せるから大丈夫だ」「中国語と日本語両方できるので仕事ができる」「日本語学校で成績優秀、有能な中国人だから」と思う方はたくさんいらっしゃるでしょう。今回は取引に際して通訳場で起こった失敗例や問題を具体的にお話しし、このような失敗を避けるために、通訳の正確さと忠実さの重要性、そして専属コンサルタントの確保の重要性について解説します。
5年前の出来事
話の趣旨を理解して忠実に翻訳し相手側に伝える、これが通訳の生命です。ところが中にはこんな通訳もいるので。
5年前に、日本会社A社の中国スタッフ、ここでは仮に王さんと呼びましょう。彼女はA社で中国の調達を担当していました。日本の有名大学を卒業し、入社してわずか1年で、中国調達の総責任者に任命されるという成績優秀な女性です。
A社が必要とする部品の購入数量は少なく、中国のメーカーB社にとってはほとんど利益がありません。そのため、B社は低利益と最低発注数量(MOQ)を満たせない状況のA社に対して、では、中国のメーカーB社は、A社が良いお客ではないと感じ、手間ばかりかかって利益も上がらないと判断したようです。その部品の供給は、製造や出荷のコストに対して割が合わないと、A社に何度も伝えました。
工場訪問と誤解
そして、取引を続けていくのは難しい状況で、継続的な部品供給の増加を求め、B社は日本のバイヤーであるA社を工場視察に迎えました。 この時、A社の担当者は自分たちの現状を説明し、B社工場に支援を求めました。しかし、A社通訳の王さんは次第に感情を交え始め、中国工場側は思惑とは裏腹に、視察後の会議で日本側A社の王さんから手厳しい技術批判を受けました。
余計な情報が加えられ、訳者の主観が入った会話になっていたのです。
「日本からの技術要求を十分受け入れられる技術水準を持っている」と自負していただけに、B社の工場長は社長の面前で思わぬ赤恥をかかされ、面子を丸潰しにされたという訳です。
また、A社通訳の王さんは、工場のサービスが悪いと非難し、なぜ製品を提供しないのか、品質が要求を満たしていないとも言い始めました。
結果
B社工場長と社長は厳しい表情をしましたが、最後には「日本の友人からの率直なアドバイスに心から感謝します」と述べて握手を交わしました。しかし、「私どもではあなたの力になれません。他の会社に行ってください。貴社の部品を供給はできません」と別れ際に告げられました。
通訳の重要性 優秀なコンサルタントは有能なだけに、通訳の本質から外れる
本実例では、明らかに中国サプライヤーにとって、日本側の優秀な通訳コンサルタントはもっとも邪魔な存在、眼のうえのタンコブでした。たとえば、相手がなにも知らない無知な日本企業であれば、合弁交渉はもっと中国工場の思い通りスムーズにいったでしょう。本ケースは皮肉なことに最終的な結果は 日本会社が望んだものとは真逆の結果となりました。
まとめ
A社の交渉が、日本語が多少できる程度の人であったらどうだったでしょうか。力不足で通訳のレベルが不十分な場合はまだ理解できますが、調子の良い通訳に乗せられてそのままサプライヤーとの信頼関係が崩れてしまったです。通訳というのは本当に重要なポジションです。
万一、通訳が悪意を持った人物である場合、伝えたい内容が曲げられて伝えられ、交渉がうまくいかなくなり、プロジェクトは根本的に救いようがなくなる恐れがあります。
自社の偏った考え方や思い込みを正当化し、不都合な情報を出す可能性もあります。ビジネスシーンは、あらゆる利害関係者との交渉で成り立っています。交渉の場では自らの感情に支配されやすい人材に任せるのは要注意です。
そのような最悪の事態を避けるために、一番良いのは、自分が中国語を勉強することです。それが無理であれば、自ら通訳と信頼できるコンサルタントを起用することです。少なくとも、ビジネス商談交渉や経営会議の通訳を先方に頼っていては、話になりません。豊富な経験と専門知識、幅広い人脈、現場の実務経験、更に強い精神力を持っている人物でなければ、中国ビジネスの仕入れ戦略立案から運営までの適切なアドバイスを行うことは難しいです。