中国ビジネスでは、会食において中国文化特有の難しさや注意点があります。今回は宴会場で起こった実例問とその問題点を挙げて、この大歓迎のオモテナシ会の裏側を探ってみたいと思います。
まず、オモテナシの友好と実際のビジネス交渉とは混同されやすく、会食での心地よい経験が、ビジネスパートナーシップにどのように影響するかを考えてみたいと思います。
また、『兄弟』という親しみやすい言葉の裏にあるビジネス上のリアリティを掘り下げ、成功するための戦略を考察します。
オモテナシの友好と実際のビジネス
「兄弟」の親しみとは?
2018年に、ある中国の工場を訪問した際の出来事です。高級な白酒とおいしい料理がテーブルに並んでいました。中国の会社の社長は自分を「弟」、日本の部長を「兄」と呼び、会食中はずっと「兄弟」と親しげに呼び合っていました。白酒を酌み交わしながら、全員が酔い、すっかり打ち解けました。
会食後、中国会社の社長は心温まる言葉をかけました。「我们已经是兄弟了,没有比这更开心的事情了。下次你们还要再来。」(お互いにもう兄弟なので、こんなにうれしいことはありません。またご来訪をお待ちしております。)それを聞いた日本の部長は心から喜び、何度も握手を交わして帰りました。
この会食の場面は、中国企業訪問時の一例です。中国のビジネスでは会食では、大歓迎はもてなし側のメンツです。中国を訪れ大歓迎される、心地良い経験、必ずしも中国で非常に尊敬されているからとは限りません。これは「中国のもてなしの文化」です。もてなし側のメンツと相手への礼儀です。
その後、日本の部長は帰国後の社内会議で中国工場との関係が非常に良好であると報告しました。しかし、時間が経つにつれ、納期の遅延や品質のトラブルが相次き、最初の会食時に見られた「兄弟」の親しみやすい対応はなく、厳しい現実がみえてきました。
社交の場(会食場)でお客様を気持ちよくするおもてなしや、もてなし側のメンツという公式な友好の行為を、ビジネスと同じように捉えてしまうのは要注意です。
信頼関係を維持するのは一朝一夕でできるものではなく、単に「兄弟」と呼び合ったり、会食で肩を抱いたり手を握ったりするだけで築けるものではありません。